第 1 章: 開発環境の準備
GUI アプリケーション開発を始めるための最初のステップは、必要なツールを整えることです。この章では、PySide6 ライブラリをインストールし、プロジェクトのための清潔な開発環境を構築します。
仮想環境の推奨
本格的なプロジェクトを始める前に、Python の「仮想環境」を作成することを強く推奨します。仮想環境は、プロジェクトごとに独立したライブラリのインストール空間を提供します。
なぜ仮想環境を使うのか?
- 依存関係の衝突を防ぐ: プロジェクト A はライブラリ X のバージョン 1.0 を、プロジェクト B はバージョン 2.0 を必要とする、といった状況を防ぎます。
- 環境の再現性: 他の PC で開発を再開したり、他の開発者と協力したりする際に、
requirements.txtなどを使って全く同じ環境を簡単に再現できます。
仮想環境の作成と有効化
ターミナル(コマンドプロンプトや PowerShell)を開き、プロジェクトのルートディレクトリで以下のコマンドを実行します。
-
仮想環境の作成 (ここでは
.venvという名前のフォルダが作成されます):python -m venv .venv -
仮想環境の有効化(アクティベート):
- Windows (コマンドプロンプト, PowerShell):
.venv\Scripts\activate - macOS / Linux (bash, zsh):
source .venv/bin/activate
有効化されると、コマンドプロンプトの行頭に
(.venv)のような表示が追加されます。これ以降、pipコマンドはこの仮想環境内にライブラリをインストールするようになります。 - Windows (コマンドプロンプト, PowerShell):
PySide6 のインストール
仮想環境が有効化された状態で、以下のコマンドを実行して PySide6 をインストールします。
pip install pyside6
このコマンド一つで、PySide6 本体と、Qt Designer などの開発ツールがまとめてインストールされます。非常に簡単です。
動作確認
インストールが正しく完了したかを確認するため、最小限のコードでウィンドウを表示してみましょう。以下の内容を main.py という名前で保存してください。
# main.py
import sys
from PySide6.QtWidgets import QApplication, QWidget
# 1. アプリケーションのインスタンスを作成
# すべてのPySide6アプリケーションはQApplicationオブジェクトを必要とします。
# sys.argvはコマンドライン引数のリストです。GUIアプリでは通常このまま渡します。
app = QApplication(sys.argv)
# 2. ウィンドウ(ウィジェット)の作成
# QWidgetはすべてのUIオブジェクトの基本クラスです。ここではトップレベルのウィンドウとして使います。
window = QWidget()
window.setWindowTitle('最初のウィンドウ') # ウィンドウのタイトルを設定
window.resize(300, 200) # ウィンドウのサイズを設定 (幅, 高さ)
# 3. ウィンドウの表示
window.show()
# 4. アプリケーションのイベントループを開始
# これによりウィンドウが表示され続け、ユーザーの操作(クリック、キー入力など)を待ち受けます。
# ウィンドウが閉じられると、app.exec()は終了コードを返します。
sys.exit(app.exec())
作成した main.py をターミナルから実行します。
python main.py
実行後、「最初のウィンドウ」というタイトルがついた空のウィンドウが画面に表示されれば、開発環境の準備は成功です。

これで、PySide6 を使ったアプリケーション開発のスタートラインに立ちました。次の章では、GUI アプリケーションの根幹をなす「シグナルとスロット」という重要な概念を学びます。